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0645時、奥又白池との分岐点を出発。
振り返れば明神。
上空の雲が、この先いやな感じに変化していかないことを祈りつつ、そろそろきつくなりだした勾配を、時折手も使いながら登ってゆきます。
ここまでの長いアプローチの間に身体が充分にこなれたのか、まったく登りが苦になりません。ちょっと傾斜がゆるやかになると、走ったりする余裕もあるほど。
ま、今回はたったの5~6kg程度の荷しか背負っていないので、余裕があるのは当たり前なのかな?だけど、ほぼ1年まともな登山から遠ざかっていた身としては、自分の体力がそれほど衰えていなかったことがわかって、とてもうれしかったわけなのです。
慶応尾根のコルと推定されるあたりに到着。0745時。
ここは森の中。周囲は緑と黄色の世界です。
そのなかで、鮮烈に赤い色が目に飛び込んできました。これは何の実だろう。
そういえば、ここに来るまであまりに周りの景色に圧倒されすぎて、足元の小さきものたちのことが全く見えずにきてしまったなぁ、なんて思いつつパチリ。
神様は足元にも宿る、だけどついつい分かりやすいものに気をとられて、足元がおろそかになっていた、そんなワタクシへの赤信号。しばし止まって休憩。
初めて水筒のふたを開けます。
さて出発。
もうなんていうのか、目に映るもの、頬をなでる風、落葉枯葉のにおい、風に騒ぐ木々の葉の音、靴底を通して感じる石ころや木の根、どれも全てが素晴らしく感じます。
木々の間に見えるV字型の青空に、峠の存在を感じました。あと一登り。
天頂で藍に染まれり空の青
登るわが身も染めなおさるる
目指す最高地点「屏風のコル」が見えてきました。
コルとは、山の稜線を馬の背に見立てた場合、鞍が置かれるべきいちばん低い地点のこと。「鞍部」ともいいます。
上からは続々と涸沢からの登山者が下ってきます。
実はこのパノラマコース、傾斜が急なためか、登りよりも下山ルートに使う方が一般的です。ただ、ワタクシは急な下りで身体を制御するのが苦手なゆえ、登りルートに使ったという事情。実は膝が弱いのです。
上から下ってくる方々が、この先の激下りで味わうであろう苦労を考えるとため息が出てきますが、すれ違う中高年の方々は皆元気一杯。
日本の元気は、おじちゃんおばちゃんの膝から産み出されているのです。
さて次回、「その先の景色」をご披露いたします。